仕事でも勉強でも遊びでも、最大限のパフォーマンスを発揮するために必要なのが「集中力」です。この集中力と毎日の食事には深い関係があります。もちろん、何を食べるかは大事。しかしそれ以上に「どのように食べるか」が重要なカギになってきます。

行動プランと消費エネルギーに合わせて食事を決める

食事は私たちのエネルギー源です。そして、エネルギーの消費量はその日の活動レベルで変わります。であれば、その日の予定や行動プランに合わせて、「食事スケジュール」を組んでしまうのがベスト。
例えば、ある日は朝から大事な会議があって集中力が必要だという場合、ある日は一日中外回りの営業に出かけるという場合、またある日は自宅で長時間にわたって試験勉強をするという場合、それぞれ消費エネルギーは違います。
ここで注目すべきは「脳」の働きです。脳は体全体で必要なエネルギーのうち20%を消費すると言われています。そして、脳の唯一のエネルギー源がブドウ糖で、これが不足すると脳が十分に働かなくなり、集中力や思考力の低下を招いてしまいます。ですから、行動プランに合わせて効果的にブドウ糖を脳に供給することで、それぞれの場面で十分に能力を発揮することが可能となるのです。

「糖質」の種類や摂り方を工夫する

糖質は私たちが主食とするご飯やパンを始め、野菜や果物ほか、甘味料などに含まれる糖類に含まれています。ブドウ糖はその中でも最も分子が小さく、吸収されやすい糖質です。ブドウ糖は脳以外にもあらゆる臓器でエネルギーとして使われる栄養素で、食事から摂りいれたあと、血液に乗って全身に運ばれています。血液中のブドウ糖濃度のことを「血糖値」と言いますが、このブドウ糖がエネルギーとして使われる際に必要なのが膵臓から分泌されるインスリンです。ですが、いくら糖がエネルギーとして必要だからといって、常時摂りすぎていれば大量のインスリンが分泌されて膵臓に負担がかかり、代謝不良を起こして血液中に糖があふれて糖尿病を招いてしまいます。
ですから、ブドウ糖をただやみくもに摂れば良いという訳でなく、その種類や摂り方を工夫することが大切になってきます。

1日の活動量が多い場合

ご飯に含まれるデンプン質は口腔内の消化酵素アミラーゼで分解され小腸に早くたどり着くため、食後すぐに血糖値が上がりやすくなります。朝一番の会議や、朝から外回りへ出かけるという場合は、朝食にご飯などの主食をしっかり食べるようにしましょう。また、1日を通して活動量が多い場合は、3食をしっかり食べることが大切ですが、量には注意してください。一度に多くの糖質を摂り過ぎて血糖値が急激に上がると、その反動で低血糖を招きやすく集中力の低下を招きます。一度に食べる量に注意しながら、必要に応じて間食にバナナなどを食べてエネルギー補給するようにしましょう。

◎朝にご飯やパンなどからデンプン質をしっかりとる
◎3食しっかり食べる(しかし食べ過ぎに注意)
◎必要に応じてバナナなどで間食をとる

1日の活動量は少ないが集中力を持続したい場合

1日の中で活動量は少ないが、集中力を持続させたい場合はあまり多くの糖質を摂る必要はありません。じわじわと血糖値をあげていくことで1日の中で安定したエネルギーで集中力をキープすることを目指しましょう。主食を玄米や全粒紛のパン、蕎麦など低GI食品(血糖値をゆるやかに上昇させる食品)にする、野菜や果物の食事にする、または食べる順番を消化に時間のかかる野菜(食物繊維)から先に食べてデンプン質は後に食べる、などの工夫が必要です。

◎デンプン質を控えめにする
◎低GI食品を意識して食べる(玄米や全粒紛のパンやパスタ、蕎麦等)
◎野菜や果物中心の食事にする

日によって活動量が異なる場合は、これらの2パターンを適宜取り入れるとよいでしょう。

脳に良い栄養素を取り入れる

活動パターンに則した食べ方について理解したら、脳の働きを良くする栄養素も積極的に取り入れましょう。まずはじめに、

◎記憶力や集中力を高める…オメガ3必須脂肪酸、DHA、EPA
多く含まれる食品)亜麻仁油、えごま油、青魚の油、ナッツ類など

脳の60%は脂質でできています。そのため、良質な油の摂取は脳の健康維持とイコールです。DHAやEPAなどのオメガ3必須脂肪酸は脳の血流を良くし、栄養や酸素が行きわたりやすくなることで脳が活発に働くようになり、記憶力や集中力が高まります。海馬やシナプスには特にDHAが多く含まれています。続いて、

◎神経伝達をスムーズにする…ギャバ
多く含まれる食品)味噌、玄米

脳内の神経伝達物質として働くアミノ酸の一種で、心と感情をつくる物質ともいわれています。副交感神経を刺激するため、体がリラックスの状態になって集中力アップ、睡眠の促進や記憶・気力・記憶の改善などに作用します。続いて、

◎脳の酸化を予防する…ビタミンC、ビタミンB群(B6,12,葉酸)、βカロテンなど
多く含まれる食品)野菜、果物、肉、魚介類

脳は他のどこよりも大量の酸素を消費するため活性酸素も発生しやすく、酸化しやすいと考えられます。抗酸化作用のあるビタミンやミネラルを積極的にとるようにしましょう。また、ビタミンB群のビタミンB6、ビタミンB12、葉酸は脳細胞や脳神経の修復や再生に働くことが分かっています。

おわりに

私たちは毎日の生活にそう大きな変化がある訳ではないですが、それでも365日全て同じスケジュールや活動量で生活しているわけではありません。「集中力」を高めるという事に着目しても、食べ方の工夫ひとつで十分にパフォーマンスを発揮できるかどうか変わってきます。そのことを理解して、食事のメニューや食べ方を考えてみてください。ただし、脳によい食材をただ食べれば良いということでなく、その栄養をしっかり吸収できる体内環境であるか、が大切であることはいつも忘れないようにしてくださいね。